「不思議の国のアリス」の原作は、世界中の物理学者を刺激して止まないばかりか、ディズニー版のアニメは高い評価を得た作品である。

イギリスの数学者(筆名:ルイス・キャロル)が、同僚教授の娘・アリスを笑わす為に聞かせた話が、原作の元となっている。

コナン・ドイルは、「名探偵シャーロック・ホームズは、ルイス・キャロルの親友だ!」と名言している。

ロンドンで、1865年に「不思議の国のアリス」が刊行された後に、子供の頃のウォルト・ディズニーはこの物語に強烈な刺激を受け、1924年にアリスを主人公にしたアニメ+実写のドラマ「アリス・コメディー」を56本作り出す。

それは、ミッキーマウスが生まれる前のことだった…。 

1928年にミッキーマウスを誕生させたウォルトは、1933年に念願だった「不思議の国のアリス」を実写版で制作しようとするが、他の映画会社に先を越されてしまい断念する。

1937年に「白雪姫」の大成功を受け、次作は長編アニメによる「不思議の国のアリス」と決まるが、ルイス・キャロルの原作の面白さをアニメで表現するのは予想以上に困難を極め、1939年に第二次世界大戦が始まり、またもアリスの映画は挫折する。

その後、1950年の「シンデレラ」、1953年の「ピーターパン」とディズニー長編アニメは大成功を収めるが、1951年の「不思議の国のアリス」は振るわずに不評に終わる。

これを受け、ウォルト・ディズニーは“Alice has no heart”という有名な言葉を口にする。

あまりにも強烈な脇役たちの造形に力を取られ肝心のアリスの掘り下げに欠けたという反省である。 

しかし、ディズニー映画「不思議の国のアリス」は、後に教育用映画に再編集されて、アメリカ中の学校で上映される。

19601970年代のアメリカの子供達はこれを観て育った。

失敗作と言われた、ディズニー映画「不思議の国のアリス」は初公開から20年の時を経て、アメリカの若者に高い評価を受け、その後80年台には日本を始め全世界で爆発的な人気となる。

こうして、「不思議の国のアリス」の物語の根底を支えている、原作者ルイス・キャロルの理論が再び注目される事となる。

欧米のメルヘンを原作とする事が多いディズニー映画にあって、「不思議の国のアリス」の時空理論が、ディズニーパークでのミッキーマウスの魔法を証明する形となっていく。

それが、《ひとりの存在が同時に幾つもの場所に出現できる》という、「時間空間理論」である。

先端数学の考え方では、時間も空間も大きさも相対的なもの…

それは、ひとつの場所を何人もが占有でき、ひとりの人がいろいろな姿や大きさで同時に幾つもの場所に出現できることを、理論づけている。

この理論により、ミッキーマウスが同時にアメリカや東京、パリや香港のパークでショーやパレードに出演できることが証明されるのである。

これは高等数学の世界観を色濃く反映させたものであるが、例えば「孫悟空」の分身法などを、証明すると先の理論が当てはまる。

これは、妖怪が実在する事を証明したものでもあるといえよう。

妖怪が住むと言われる、「隠れ里」とは…

私たちが存在する三次元の世界ではなく、SF映画に出てくる四次元と言われるような世界であるとする、だがアリスの時空間理論によれば、“時間も空間も大きさも相対的なもの”となる。

相対的とは、「他の関係や比較において成り立つもの」という意味。

他と比べて評価するのが「相対的」、他と比べようのないものが反対語となる「絶対的」

つまり、三次元も四次元も相対的なものであり、同時に存在している。

アインシュタインの「相対性理論」は、時間の流れが絶対的はなく相対的なものだと証明した理論であり、高速で移動している物体の時間は移動していない物体に比べて、相対的にゆっくりと流れているというもの…

私たちが住む世界の流れと、妖怪が住む隠れ里では時間の流れが違うのは、この事からも分かる。

だからこそ妖怪は、同じ姿で時を越えて現れるのだ。

遠野物語の「マヨイガ」も、このような現象として説明する事ができるだろう。

 

ミッキーマウスが、同じ姿で世界中のパークに同時に出演できるのも…

妖怪が、そのままの姿で私たちの目の前に突如として現れるのも…

アリスが変なウサギを追いかけ深い穴に落ちて不思議の国を冒険するのも…

《ひとりの存在が同時に幾つもの場所に出現できる》という、時間空間理論なのである。