数十年前の、函館旅行での話…


元町を散策していて、休憩しようとロープウェイ駅近くの喫茶店に入った。

ちょうど、開店して間もない時間という事もあり、他に客は誰も居なかった。

広い店内に綺麗なお姉さんが1人、フツーは「お好きな席にどうぞ!」とか言うと思うが、その時は「こちらの席にどうぞ!」と、わざわざ案内されて、大きな窓の側にあるテーブル席に座らされた。

ブレンドを頼むと、店内にコーヒー豆を挽く音が響き渡った…

やがて、芳しい香りをお姉さんが運んできてくれた。

テーブルにコーヒーカップを置いたお姉さんが、細く白い指でテーブルを撫ではじてた。

そして…

「この席はね、TAKUROの席なの。いつも、この席でTAKUROは曲の詩を書いていた。HOWEVERは、この席から生まれた曲なのよ」

と、教えてくれた。

丁寧にいれられた香り豊かなコーヒー、このコーヒーもTAKUROが飲んでいたのだろう。

お姉さんは、TAKUROのかつての同級生だったのだろうか?

そして、TAKUROを今でも好きなのだ。


やがて、お姉さんは黙って席を離れるとカウンターの中へ入った。

それまで小さく流れていたクラシック音楽が止まり、店内にHOWEVERが流れ始めた♪

僕は、目を閉じてゆっくりと背もたれに体をあずけ、歌に耳をすませた。