昔、青森のテレビ局のアナウンサーがラジオで語ったものだ…


その日、出張で八戸に来ていた男性アナウンサーは、仕事帰りに八戸駅発で函館駅着の特急列車のグリーン車に乗った。

通路を挟んだ隣の席に4人の若者が椅子を合わせて座っていた。

アナウンサーが席に座ろうとすると、隣に居る背の高い男性が、こちらに軽く会釈をしたので思わず会釈を返した、その男性は手に文庫本を持っていた。

他の3人は眠っているわけでなく、ただ目を閉じているようだ。


どこかで見たような若者だな?と思ったが、名前も分からずジロジロと見るのも失礼だと、隣の男性の文庫本に目をやると、太宰治の本だった。

思わず、「太宰治が好きなんですか?」と、つい声を出した…

すると、読んでいた本を閉じ、人懐っこい愛想の良い笑顔で「えぇ」と短く答える。

その声に反応するように、目を閉じていた他の3人がこちらを黙って見ていた。


アナウンサーは、名刺を出しながら身分を明かし、「つい、青森出身の太宰治を読んでいたので、嬉しくて思わず声を掛けた」と無礼を謝った。

すると、「僕らはバンドをやっていて、ふるさとの函館へ帰るのです。これも何かの縁でしょう、良かったら青森までお話ししませんか?」と、隣の男性が答えるとメンバーの3人も同じく答えるように黙って頷いた。

青森駅までの車中で、アナウンサーとその男性は話をしていたが、他の3人は一言も喋らず、男性やアナウンサーの話に耳を傾け、時おり頷いていたという。


やがて、列車は青森駅に到着した!

アナウンサーが挨拶をし席を立とうとすると、「良かったら、これ聴いてもらえませんか?僕らの新しい曲なんです!」と一枚のCDを渡してくれた。

それは「HOWEVER」という歌で、その時に初めて「僕らは、GLAYと言います」と名乗ったという。

アナウンサーは、ラジオの番組で…
とにかく、礼儀正しい若者たちだった。話をしてくれたのはTAKUROで、CDを渡されるまで正直言ってGLAYだとは気が付かなくてね、ごくフツーの若者たちだったんだよ。
どうして、飛行機ではなく特急列車で函館に帰るのか?と聞くと、「僕らはまだ駆け出しですから…」と答えた。
函館にわざわざ帰るのは、大変ではないのか?と聞くと、「僕らは函館を愛しているし、ふるさとは函館なんです。それを一度も忘れたことはありません」とTAKUROが答えると、メンバーの3人は大きく頷いたんだよ、とにかく感動したね~。
と、アナウンサーは語っていた。