7/3は、私たちの妹である、ぴいなつちゃんの誕生日です!

すみません、遅くなりました(´;ω;`)


今回は、文筆堂を舞台にしたぴいなつちゃん(麻琴)の物語です。

函館ストーリー「行き暮れて、行き着いて!」で描かれていない場面を挿入し、そこから時が経ち舞台は文筆堂へと移ります。


「ぴいなつちゃん、お誕生日おめでとう!」

それでは、ぴいなつちゃん(麻琴)が主人公の箱館ストーリーを、お楽しみ下さい。


亮介くん、いきなり呼び出して悪いな」

「いえ、栗生姉さん。いつも麻琴がお世話になっているのに、ご無沙汰してすみません」

「麻琴ちゃんのおかげで、この店は繁盛して助かっているよ」

「そういえば、若い子たちが増えたそうですね!文筆堂は賑やかになったと麻琴が張りきっていましたよ」

「今回は亮介くんに来てもらったのは、麻琴ちゃんの事なんだ」

栗生姉は、亮介に文筆堂に来てもらった理由を話した。

 

亮介は文筆堂からの帰り道、八幡坂をゆっくりと歩きながら10年前の事を思い出した。

「麻琴、仕事の区切りがつくまでしばらく結婚は延期にしてほしい」

亮介さん、あなたが言ったのよ!私の誕生日までに結婚しようって」

「だから…」

「もう、いいわ」

 

そして、6年前の誕生日。

麻琴は、まだあの時の喧嘩のモヤモヤの中にいた。

「あ~あ今日は最悪な日だわ、髪はボサボサでひどい顔だし」

昨夜、久しぶりに枕を濡らした。

麻琴にとって、今日は27歳の誕生日だった。

 

亮介、モヤモヤを昨夜の内にきれいサッパリと消していた。

麻琴と別れて、札幌から5年ぶりに函館に戻って来た亮介は、十字街にあるフラワーショップにいた。

「えっと、ここにあるバラの花から27本で可愛い感じの花束にして下さい」

麻琴の7/3の誕生日には、バラの花を贈ると決めていた。

 

1830分ベイエリアを出発した観光船ブルームーンの船上で、亮介は麻琴にポロポーズした。

そして、次の日から2人は函館で暮らすことになり、やがて27本のバラの花は麻琴の手によりドライフラワーへと姿を変え、今も大切に保管してある。

 

亮介は八幡坂を歩きながら、「やきとり弁当を買っていこう!」と自分に言い聞かせるように声に出していた。

麻琴は、ソファーの上でふと目を覚ました。

ついTVを観ながらウトウトしていたようだ。

「そろそろ亮介さんが帰って来るころかな?」

とりあえず、麻琴は寝たフリをして待つことにした。

やがて、やきとり弁当のタレの匂いと共にリビングのドアが開いた。

 

次の日…

元町にある文筆堂では、相変わらずワチャワチャと騒がしい時間が流れていた。

「みのりちゃん!どう曲がっていない?奏ちゃん、ちゃんと持ってる?」

「冬果ちゃん、大丈夫!バッチリだよ」

奏太朗と冬果はキラキラ光るモールを窓に飾り付けていて、松原みのりはテーブルクロスを準備していた。

夏妃と青田亜弓はキッチンで料理の下ごしらえをしていて、栗生姉と尾崎はワインやビールやジュースなどを準備し、桐山卓也は自分で描いたポップやポスターを貼っていた。

その頃、野本直美は麻琴と一緒にベイエリアにいた。

野本直美がやっているブログ、浪漫函館の取材として麻琴に協力をお願いしていたのだ。

 

「よし、だいたい準備が出来たな!これでいつ2人が戻って来ても大丈夫だ」

「直美ちゃんの事だから、上手くやってくれるだろう」

栗生姉と尾崎は満足そうに文筆堂を見渡してそう言うと、みんながウンウンと頷いた。

そして、タイミングよく2人が顔を出した。

 

「遅くなってすみません、手伝いも出来ずに」

「こんにちは、もっと早く来れれば良かったんだけど」

声の主は、亮介と康平だった。

2人は、プレゼントの用意で出掛けていたのだ。

「今、準備が終わったところだよ!」

栗生姉が亮介康平に声を掛けると、亮介を初めて見る奏太朗と冬果、青田亜弓と桐山卓也、松原みのりに、夏妃が「亮介さんは、麻琴ちゃんの旦那さんなんだよ」と紹介していた。

「こんにちは、亮介と言います!いつも麻琴が迷惑かけてごめんなさい。でも、ウチでは毎日のようにみんなの事を楽しそうに話して聞かせてくれるよ。だから、初めて会った気がしないな、ねぇ康平さん」

「そうだな、夏妃もいつもみんなの事を話してくれるよ。きっと妹や弟みたいに思っているんだろうな」

亮介と康平がにこやかに話すと、奏太朗と冬果、青田亜弓と桐山卓也、松原みのりは、顔を真っ赤にして照れてしまった。

 

「みなさん、麻琴のためにありがとうございます!こんな素敵な誕生日会を開いていもらえるなんて麻琴は幸せ者です。何も知らないまま来るので、きっと感動してワンワン泣くと思います。本当にありがとうございます、何とお礼を言ったらいいのか…」

そう言うと亮介は、深々と頭を下げた。

「お礼を言うのはこっちだよ、麻琴ちゃんの明るさにはどれほど癒やされているのか?文筆堂がこうしてやっていけるのも、麻琴ちゃんのおかげだ」

すかさず栗生姉が答える。

「そうだね、麻琴ちゃんのおかげで僕らは文筆堂の仲間になれた。栗生姉さんや夏妃ちゃんとの出会いも麻琴ちゃんがいなければ無かっただろう。もちろん、亮介くんや康平さんとの出会いもね」

尾崎がそう言うと、奏太朗と冬果、青田亜弓と桐山卓也、松原みのりを呼び、一緒に頭を下げた。

 

栗生姉さん尾崎先生、そんなお礼だなんて困ります!それに文筆堂でこうして皆さんが出会えたのは、直美ちゃんのおかげじゃないですか?麻琴も言っています、直美ちゃんは文筆堂の救世主だって、もちろん尾崎先生や若い皆さんがいるからですよ」

「とにかく、今日は麻琴ちゃんの誕生日だ!お互いにお礼ばかり言っていないで、そろそろ麻琴ちゃんが帰って来るだろう?」

康平がそう言うと、夏妃を見た。

「康平さん!そうね、主役は麻琴ちゃんだもんね。今日はみんなでたくさんお祝いしましょ。それが麻琴ちゃんに対するお礼になるわ。あと、直美ちゃんにもね」

夏妃が、にこやかに康平の後を継いだ。

 

やがて、賑やかな声が聞こえてきた。

「直美ちゃん、お腹空いたね。もうお昼過ぎたし、なんか食べてくればよかったね」

「麻琴ねぇさん、ちょっとここで待っていて下さい!栗生姉にいさんにケレーがあるか聞いてきますので、もし無かったら私が何か買って来ますから」

「直美ちゃん悪いね。ケレー無かったらステピを食べに行こう!」

麻琴が文筆堂の入り口で待っている間に、野本直美が栗生姉に今来たことを伝えると、急いで麻琴の元に戻った。

「麻琴ねぇさん、ケレーあるそうです!栗生姉にいさんに大盛り頼んでおきました。さぁ~どうぞ」

「やったー!直美ちゃんも大盛りにしようよ」

野本直美に背中を押され、麻琴が文筆堂に入って来た瞬間に、冬果が「麻琴ねぇさん!誕生日おめでとう」と叫ぶと、パンパンとクラッカーが鳴り響いた。

そして、ワーッとみんなが麻琴のところにやって来て祝福をした。

奥のテーブルでは、栗生姉と尾崎、康平と亮介が拍手していた。

 

夏妃が麻琴に「誕生日おめでとう!」と言い、背中を優しく押した。

ビックリして立ち尽くす麻琴を冬果や青田亜弓が手を取り奥へと導く。

「ありがとう直美ちゃん!いつも面倒なことを頼んでごめんね。でも、これは直美ちゃんじゃないと出来ないのよ。疲れたでしょ、麻琴ちゃんと一緒に今日は楽しんでね」

夏妃が優しい笑顔で野本直美をねぎらうと、松原みのりが野本直美の手を取り奥へと連れて行き麻琴の隣に座らせた。

 

栗生姉が「麻琴ちゃん、誕生日おめでとう!」と言うと、「おめでとう!」の声とともにグラスを合わせるカチンという音がテーブルの上で響いた。

やがて麻琴の誕生日を祝福するように、元町の教会の鐘の音が遠く近くに聞こえてきて、文筆堂では大きなプレゼントを手にした麻琴の笑顔が輝いていた。

 

END


今回のぴいなつちゃん(麻琴)の物語は、いかがだったでしょうか?

函館ストーリー「行き暮れて、行き着いて!」からの時間経過と、今の文筆堂へと繋がる物語にしました。

いつもはムードメーカーであり明るくて優しい、麻琴ねぇさんですが…

今回はいつもと違って前面には出ず、しおらしい雰囲気の麻琴ですw


7/3に誕生日を迎えた平成生まれの私たちの妹・ぴいなつちゃん!

お祝いの物語が遅くなり、ごめんなさい(; ・`ω・´)

やっと、これにてUPできました。


函館ストーリー「行き暮れて、行き着いて!」は、こちらからどうぞ↓

https://greensaster.blogspot.com/2022/07/blog-post_3.html