彼女は、一人カウンターで熱燗を飲んでいた。

熱々のお酒を口に近づけると、酒気が目にしみた。


先月に別れた彼は、冬はいつも熱燗を飲んでいた。

そして、飲むたびに熱燗や日本酒の美味しさを説いた。


「旅をするなら、北の街がいい…」

そう自分に言い聞かせて、彼女は函館にやって来た。


お酒は、これで2本目だった。

口を近づけると、酒気がジーンとしみた。

そしてホロリと、静かに涙が頬を落ちた。

その向うには、同じくらい静かな雪が降っていた。