今回も箱館ストーリー「文芸サロン・箱館クリオネ文筆堂物語」でお楽しみ下さい!

おやおや?またしても楽しげな会話が聞こえていますが、文筆堂では何かが起きているようですね。

 
箱館ストーリー「文芸サロン・箱館クリオネ文筆堂物語」

 

「ただいまー!」

松原みのりが、はにかみながらも元気な声でやって来た。

「おかえりー!」

と、栗生姉が笑顔で答える。

 

「えっ、今日はまだ皆さん来ていないのですか?私一人だけだと、ただいまー!もちょっと恥ずかしいな。すんごい勇気を出して言ったのに」

「ハハハッ!大丈夫だよ。それに、堅苦しくこんにちは!とか言われるより、ずっと良いよ」

「そうですよね。でも、私はまだ名前を言うのに抵抗あるかな?栗生姉にいさんとか、麻琴ねぇさんとか、なんとなく」

「僕は、栗生姉にいさんとか呼ばれているけど、どう見てもオジサンだしね」

「いえ、そんなつもりじゃなくて。ただ、皆さん凄いひとばかりだから…」

「確かにそうだよな!でも冬果ちゃんはスグに馴染んでいたよ。尾崎先生と直美ちゃん以外の人にはね、初めて尾崎先生と直美ちゃんに会った時は、あの冬果ちゃんは何も言えないし目を合わすことも出来なくてモジモジしていたそうだよ」

「えぇ~面白い、あの冬果ちゃんが?どうしたんだろ」

「尾崎先生は、教師だから苦手なんだろうな。直美ちゃんは、ミステリアスな感じがすると言っていたな」

「冬果ちゃんらしい。でも、直美ねぇさんはすっごい尊敬するけどな。だって、直美ねぇさんのおかげで、皆さんと出会えたし」

「そうなんだよな、直美ちゃんのおかげで観光のお客さんも来てくれるし、店の売上げも倍どころかもっとだよ。直美ちゃんがいなければ、皆んなと知り合えることなく店も閉めていただろうな」

 

しんみりとする雰囲気が漂う中、松原みのりはパッと顔を明るくして…

「あのー、とても良い匂いがするけど、カレーですか?」

「そうなんだよ、今はまだ試作中というところだね。ウチはせいぜい飲み物程度しか出していなかったけど、ちょっとしたランチでも出せたらいいなと思って朝から仕込んでいるところなんだ。みのりちゃんは、料理とか得意かい?手伝ってほしいんだけどな」

「いや、私はその、お母さんにも料理を手伝えと言われるけど、あっ食器洗うのは得意です!」

「僕も料理は苦手でね、だから飲み物しか出さないのさ、ここは喫茶店じゃないからな」

「でも、文筆堂のサロンは人気があるじゃないですか?私も、クリオネ・スタイル好きですよ」

「だいたい、この場所をサロンにしたのは麻琴ちゃんなんだよ。夏妃ちゃんを連れて来て、ここをサロンにするから飲み物ぐらい出せるように、コーヒーの淹れ方を勉強しろ!って言われてね、参ったよ」

「麻琴ねぇさんらしいですね。それにいつも麻琴ねぇさんには頭が上がらないんですね、面白い」

松原みのりが、屈託のない笑顔で栗生姉を見つめていると…

 

「ただいまー!」と、声がした。

「おかえりー!」「おかえりなさい!」と栗生姉と松原みのりが同時に挨拶をした。

「あら、みのりちゃん一人なの?寂しかったでしょ。今日はキングベークのラスクがあるわよ。今、カフェオレを淹れるわ、栗生姉にいさんはコーヒーね」

夏妃が爽やかなそよ風のような声で言うと、いそいそと奥へと歩いて行った。

「みのりちゃん、そろそろ麻琴ちゃんが来ると思うぞ、食べ物の匂いには鼻が利くからね」

栗生姉がクックックッと笑っていると、そこへ「ただいまー!」と元気な声がした。

 

「おかえりー!」と、栗生姉と松原みのりが返事をすると、夏妃が顔を出して…

「おかえりなさい!亜弓ちゃんカフェオレでいい?桐山くんはレモンスカッシュでしょ」

と声をかけた。

やって来たのは、青田亜弓と桐山だった。

青田亜弓が「みのりちゃん!」とそそくさとサロンへと入っていく。

慌てて立ち上がり松原みのりは、青田亜弓とキャッキャッと話し始めた。

栗生姉が桐山を手招きすると、「んー麻琴ちゃんじゃなかったか?外したな」と笑っている。

「麻琴ねぇさん、どうかしたの?」と桐山が、松原みのりの顔を見た。

「食べ物の匂いがすると、麻琴ねぇさんが来るって!」と、松原みのりが笑いながら答えた。

「なんだ、そういうことか。それなら冬果ちゃんもだよ!ねぇ~亜弓ちゃん」

桐山がそう言って3人が笑っていると、夏妃が飲み物を運んできた。

「すみません!私ぜんぜん手伝いもしないで、その代わり洗い物は私がやります」

松原みのりが申し訳なさそうに、頭を下げる。

「みのりちゃん、気にしなくていいのよ」夏妃がそう言うと…

すかさず栗生姉が「麻琴ちゃんがいたら、こき使われていただろうな」と言うので、皆んなが大笑いをした。

 

「栗生姉にいさん、さっきから良い匂いがするんですけど、もしかしてアレですか?」

青田亜弓がそう言うので、皆んなが興味深そうに「アレって何ですか?」と声を揃える。

栗生姉はもったいぶった感じで、キッチンから鍋を持ってくると、ドヤ顔で答えた。

「文筆堂の新メニューで!ケレーだ!」と胸を張った。

明治13年頃、函館市民はカレーのことを「ケレー」と呼んでいた。

その頃のレシピはないが、野菜や鶏肉を混ぜてじっくりと煮込んだスープ状のもので滋養強壮の薬となるスープだったらしい。

じゃがいもは入っていなかったらしいけど、当時の味をできるだけ再現して、文筆堂のランチメニューとして「ケレー」を出したいと、栗生姉が答えた。


「亜弓ちゃんが、函館では昔から洋食が食べられていたようですけど?と尾崎先生に質問したところ、直美ちゃんがこの「ケレー」のことが書かれている資料を見つけてね。それじゃ、文筆堂で再現してみようってなったのさ。ついでに上手くいったら新メニューにどうだろう?という話になってね。とりあえず、なんちゃってケレーを朝から作っている。そろそろ、尾崎先生と直美ちゃんが材料を持ってきてくれるはずだよ」

「そうなの亜弓ちゃん?凄いじゃないか。楽しみだなー!」

「凄いのは、直美ねぇさんだよ。どこから探してくるんだろ?だって、尾崎先生も知らなかったのに、ホント尊敬しちゃう。あっ卓也くんはケレーのポスターをヨロシクね。栗生姉にいさん、卓也くんはイラストとかすっごい上手なんですよ」

 

「卓也くん?」皆んなが、そう言うと…

すかさず夏妃が、「そっか、桐山くんの名前は卓也くんか、いつも桐山くんって皆んなで呼ぶからね。でも、弟みたいな感じで桐山くんっていつも呼んでいるのよ」

夏妃が優しい笑顔で答えると、なぜか青田亜弓も桐山と一緒に顔を真赤にして照れている。

「あのー、私も卓也くんと呼んでいいですか?それと、亜弓ちゃんって呼んでいい?」

松原みのりが立ち上がり、2人に向かって声をかける。

「みのりちゃんはね、名前を呼ぶのにまだ遠慮があるらしくて、そんなの気にしないでいいと言ったのさ」

「そうよ、みのりちゃん。私たちはみんな友だちでしょ?ここでは何も遠慮することないのよ。逆に遠慮されたり気を遣われると困るかな」

栗生姉と夏妃がそれぞれ答えると、松原みのりがパッと顔を明るくして「ありがとうございます!」と元気に言うとペコリと頭を下げた。

「みのりちゃん、私たち同級生だよ!だから、亜弓でいいよ。でも冬果は、冬果ちゃんの方がいいかな」

「亜弓ちゃんは冬果ちゃんと幼なじみなんだって、僕も卓也でいいよ。確かに冬果ちゃんは、怖いからね」

「ムリムリ、彼氏がいる人を呼び捨てなんて、できない。それに卓也くんと呼ばないと冬果ちゃんに怒られそう」

若い3人が笑顔で語っているのを、夏妃は目を細めて見つめていた。

 

「あれ、みのりちゃんは森川くんという彼氏がいるんだろ?確か…」

栗生姉が首をひねりながら、思い出したように松原みのりに声をかけた。

「いや、違います!そんなんじゃなくて、ただのボーイフレンドです」

松原みのりが慌てて否定する。

「ふふ~ん、どこかで見た光景だな。亜弓ちゃんに桐山卓也くん、そうだろ?」

栗生姉がクックックッと笑い出す。

3人はお互いの顔を見ながらモジモジとしているので、すかさず夏妃がフォローする。

「もう栗生姉にいさんったら!でも、みのりちゃん良かったら森川くんも連れて来てよ。仲間が増えるのは楽しいし」

優しい夏妃の声が響くころ、尾崎と野本直美がやって来た。

 

「ただいまー!」

尾崎と野本直美が重そうなエコバックを抱えている。

栗生姉と夏妃が慌てて駆け寄り、エコバックを受け取った。

「ふたりともごめんな、重かっただろう?こんな坂の上まで。連絡くれれば受け取りに行ったのに」

栗生姉が申し訳なさそうに頭を下げた。

 

青田亜弓と桐山卓也、そして松原みのりは、《ここでは何も遠慮することないのよ。逆に遠慮されたり気を遣われると困る》という、夏妃の言葉を思い出した。

ついさっき言われた言葉が、3人の心に重くのしかかる。

特に、《遠慮や気遣いをするな!》という言葉を素直に受け止めた松原みのりは、これは言葉そのものの意味ではなく、遠慮も気遣いも相手に対する優しさであり思いやりなのだと気がついた。

一方の青田亜弓と桐山卓也は、自分たちの若さを恥じた。

若いから許されるとか気が付かなくて当たり前とかでなく、これが大人なんだ!大人になるという事は相手を慈しむ心を持つことなのだと、思い知らされた。

椅子に座ったまま何もせずにいる自分たち、そして尊敬する大人たちはテキパキと動き回っている。

どうすればいい?どうすればいいの?スグに「手伝います!」とも言えず、モヤモヤしていた3人は心の中で葛藤しながらも、動けずにいた。

 

そんな中、野本直美が3人に声をかける。

「亜弓ちゃん、みのりちゃん、桐山くん、一緒に手伝ってくれる?材料たくさん買い過ぎちゃって」

野本直美の言葉に背中を押され、「ハイ!」と3人は大きく返事をして立ち上がった。

 

「すみません、私たちただ座っているだけで…」

松原みのりがそう言うと、青田亜弓と桐山卓也は慌てて頭を下げた。

そんな3人の心の中の葛藤を見抜いていた野本直美が、優しく諭す。

「みのりちゃん、亜弓ちゃん、桐山くん、ここは家庭でも学校でもましてや部活動でもない。家の手伝いをしないとか、学校の決まりを守らないとか、部活動での先輩や後輩との上下関係もない、クリオネ文筆堂という一つの場なの。でも、ここで私たちは親や兄弟姉妹でもない仲間という絆で結ばれている。縄文という悠久の遠い時代から、遥か彼方の宇宙の果てで私たちは過去に出会い、そして永遠ともいえる時代を過ぎてこうしてまた出会ったの。ここは栗生姉にいさんのお店だけど、私たちのクリオネ文筆堂でもあるわけ。函館を愛し仲間を想う、その事に答えなどない!それは自分たちが何をすべきか分かっているから。誰も指図などしない、若いから許されるとか自分たちは大人の言う通りにすればいい、なんてない。誰もがお互いに心を開き、思いやっている。だからこそ何をすべきか分かるの。それに誰もあなた達を責めたりしない。今、こうして自分たちがどうあるべきか分かったなら、それでいい!栗生姉にいさんも尾崎先生も夏妃ねぇさんも、そのことを喜んでくれるはず。私だって、こうしてさも偉そうに言っているけど、夏妃ねぇさんや麻琴ねぇさんにはいつも教えられるし、とても敵わない。だからこそ、ねぇさん達を見て自分を反省し勉強させてもらっている。私にとって尾崎先生との出会いがそうだったように、みのりちゃんや亜弓ちゃん、桐山くんにとっても、お互いが素敵な出会いだと言えるようにならないといけないと思う」

 

そう一気に話し終えた野本直美が、ハッ!と我に返り顔を真っ赤にしてうろたえる。

「ご、ごめんなさい!私ったら偉そうな事を言って、ホントにごめんなさい」

厨房では、黙って栗生姉や夏妃が野本直美の声に耳を傾けていた。

夏妃の目には薄っすらと涙が浮かび上がるのを栗生姉は見逃さず、決して玉ねぎを刻んでいるからではない事を分かっている。

尾崎が、ゆっくりと野本直美に近づき声を掛けようとすると、「お腹すいたー!」と大きな声がした。

いつの間にかサロンの入り口に隠れるように、麻琴と奏太朗と冬果が立っていた。

「直美ちゃん。この玉ねぎキツイよ!涙が止まらない」

麻琴は大粒の涙を流しながら、おどけた。

「麻琴ちゃん、玉ねぎを刻んでいるのは夏妃ちゃんだろ?いくらお腹が空いているからといって冬果ちゃんと2人で生の玉ねぎを食うからだ」

栗生姉の言葉に、麻琴と冬果はくしゃくしゃになって笑い、夏妃は静かに野本直美を抱きしめた。

奏太朗は桐山に耳打ちすると、スグに松原みのりと青田亜弓にその事を伝え3人は揃って

野本直美の傍に行き、奏太朗は冬果を連れて来た。

「直美ねぇさん、ありがとうございます!僕ら、みんな胸が一杯になりました」

奏太朗がそう言うと、他の4人は深々と頭を下げた。

「みんな、分かってくれてありがとう!」

野本直美が涙ながらに答えると、傍に居た尾崎が野本直美の背中に優しく手を差し伸べた。

 

「さぁ~栗生姉さん、早くケレーを完成させようじゃないか!麻琴ちゃんと冬果ちゃんのお腹がグーグー鳴っているからね」

「おっと、ご飯が足りるかな?みんな絶対に2杯は食べろよ!麻琴ちゃん、お米を用意してくれ。奏ちゃんと桐山くんは尾崎先生とテーブルを並べてくれ。直美ちゃんと亜弓ちゃん、冬果ちゃんは夏妃ちゃんの手伝いだ、忙しくなるぞ!」

「ねぇ~ケレーって何?どんな食べ物?カレーじゃないの?」

「麻琴ねぇさん、早くお米お米、私も手伝うから」

麻琴を急がすように、冬果が声をかけてお米を研いでいる。

 

朝からトロトロになるまで野菜と一緒によく煮込まれた鶏肉は、旨味が味わい深いものになっていた。

じゃがいもは入れずに丸ごと茹でたものを半分にして皿に一緒に盛り付けている。

これには麻琴がオサレ感が出ていると喜んでいた。

ようやく完成したケレーは、麻琴と冬果がおかわりを連発する中、夏妃と野本直美は細かい修正を栗生姉に提案した。

尾崎と青田亜弓は、改めてケレーについて話し合い、奏太朗と桐山はケレーのポスターの図案についてアイデアを出し合っていた。

 

「ケレーに名前を付けるのは、どうだろう?これは、直美ちゃんに付けてもらいたいな」

と尾崎が言うと、いつもは遠慮深い野本直美が席を立った。

「みのりちゃんメモしてくれる!ケレーだけでは、麻琴ねぇさんが言ったようにどんな食べ物か分かりません。地元の人でも今はケレーとは言わないし。例えば、函館ケレーとか。こんな感じで名前を付けると親しみも湧くし興味をそそります。文筆堂でしか食べれないという付加価値もあるから、文筆堂ケレーとかでもいいかもしれない。でも、ここは元町で異国情緒が残る場所であり、今では当たり前の洋服や洋食は、ここから拡がりました。もしかしたら、ケレーも元町から函館中に拡がったのかもしれない!だから私は、元町ケレーという名前を付けたいと思います。文筆堂ケレーも悪くないし栗生姉にいさんには申し訳ないけど、ケレーの文化的な歴史を考えると、元町ケレーが一番良いように思うのです」

 

野本直美がいつになく雄弁に語る姿を見て、尾崎は「ずいぶん変わったな」と思った。

いつもは麻琴や夏妃の後ろに隠れるように遠慮して、自分の意見はあまり出さなかったが、松原みのりや青田亜弓、桐山の態度を見て自分の姿と重ね合わせ3人を諭したが、本当は自分自身への言葉であり、自分が言うことで奏太朗や桐山、松原みのりや青田亜弓や冬果に想いが伝わることを信じていたのだ。

そして、栗生姉も麻琴も夏妃も、野本直美の言葉が嬉しく心に響いた様子がよく分かる。

「直美ちゃん、キミはもう一人前の大人になったのだよ。いつまでも、あの時の野本直美ではない!僕はもう、尾崎先生を卒業できるね。これからはお互いにサトちゃんナオミちゃんとして生きていこうじゃないか?そうだろ、ナオミちゃん」

尾崎は、野本直美に向かって心の中でそう呟いた。

そして、野本直美がゆっくりと尾崎を見つめた。

その顔は、いつもの優しい顔ではなく、幼なじみのナオミの顔だった。

 

松原みのりは一生懸命に一語一句、野本直美の言葉をメモしていた。

野本直美に「みのりちゃんメモしてくれる!」と言われた事が何より嬉しかった。

他の誰でもない、自分が指名された事が誇らしく、野本直美に諭されたことで自分が少し大人になった事、そして野本直美に一歩近づけたような気がした。尊敬する野本直美に。

 

「元町ケレー!オサレだね。これは美味しいよ、でももうお腹が一杯だけど、冬果ちゃんと半分こするから栗生姉にいさん、おかわり!」

「まだ、食うのか?元町ケレー、いいじゃないか。皆んなはどうだい?」

「賛成!」と全員が声を合わせると、パチパチと拍手をした。

野本直美が「ありがとー!」と立ち上がり頭を下げる。

 

「夏妃ねぇさん、これはHAKODATEEatで紹介したかったね」

「そうね、ちょっとタイミングが遅かったわね、残念だけど」

麻琴と夏妃が、しんみりと話をしていた。

HAKODATEEatとは、和洋折衷をテーマにした食の祭典で、函館の街を1枚の皿に見立てた函館の歴史と文化を食を通して知るというイベントで、麻琴と夏妃が取材を兼ねて訪れていて、その事を皆んなに報告した。

夏妃がスマホの写真を見せると、そこには麻琴が両手に食べ物を持ち満面の笑顔でいる姿が写っていて、それを見た栗生姉がゲラゲラと笑った。

栗生姉と麻琴が、写真のことで2人で騒いでいるのを無視して、夏妃はイベントの主催者と会った事を話すと尾崎や野本直美が興味を示し、奏太朗たちもぜひ会いたいと言い出した。

「何とか、連絡つけれればいいのだけど相手の連絡先が分からないのよ。文筆堂の名刺を渡して挨拶はしたのだけど、忙しそうで連絡先を聞きそびれて…」

すまなそうに、ごめんなさい!と頭を下げる夏妃だった。

 

その時、入り口から「こんにちはー!」という声が聞こえた。

 

END

 

キングベークの「函館ラスク」

パンとスイーツのお店「キングベーク」の人気商品。

北海道産小麦・バター100%の食パンを使用した、こだわりのラスク「函館ラスク」は、一口サイズのキューブ型ラスク。

可愛らしいパッケージも人気で、味はチョコレート、コーヒー、抹茶、味噌、明太子など豊富にあり、お土産にも人気!

 

「ケレー」

明治期に函館で作られたスープで、野菜や鶏肉をドロドロになるまで混ぜてじっくりと煮込んだ滋養強壮の薬だったという。

元はカレーではないが、その後にアレンジされてカレースープになったのでは?と思われる。

今は、赤レンガ倉庫内の函館ビアホールにて、食べることができる。

明治141122日 の函館新聞に「雞肉ケレー」という広告が載っているが、これが「ケレー」=「カレー」の事なのかは、本当のことは分からない。

ちなみに「雞肉」とは中国語で「鶏肉」の事である。


「桐山卓也」

今回、初めて桐山くんが卓也という名前だと、青田亜弓の口から証されます。

命名は、ぴいなつちゃんですが、夏妃の言葉にあるように「桐山くん」と呼ぶのは弟みたいな感じがするから。

もちろん、これまでフルネームでの登場がなかったからですが、文筆堂の仲間はそんな事は気にせず詮索もしないので「桐山くん」と呼ばれていました。