こちらは、「ぴいなつ作品」です!

ぴいなつちゃんの作品を紹介しています。


ぴいなつちゃんの新作「箱館ストーリー」が完成しましたので、公開いたします。

今回は「友情」がテーマ!

「文芸サロン・箱館クリオネ文筆堂」の少し前の物語で、箱館クリオネ文筆堂での日常が描かれています。 


美蘭さんのリクエストを受け、ぴいなつちゃんがインスピレーションのままに書き上げた作品です。

箱館クリオネ文筆堂その世界観を元にした日常をリアルに描く、新しい箱館ストーリーを、お楽しみ下さい!


箱館ストーリー「Dear My Friend」~箱館クリオネ文筆堂物語~

 

「ただいまーっ」

麻琴がいつものように、元気にそう言いながら文筆堂にやって来た。

「おかえり。きょうは少し早かったね」

「でしょ?それがさぁ、すっごくおいしそうなフルーツサンドを昼休みに見つけちゃって、これは文筆堂のみんなで食べなきゃって思って、週末だしめっちゃ仕事早く終わらせて市電で五稜郭公園前まで行ってきたんだ」

「ってことは、夏妃ちゃんもくるのかい?」

「もっちろん、ちゃーんと連絡してあるよ!あっ、甘いのだけじゃアレだから、金森倉庫寺子屋のぬれおかきもあるから」

「さすが抜かりないね、食いしん坊さんは。ハッハッハ」

「あったりまえでしょ~!あ、これ読んでいい?」

麻琴は、入荷したばかりの新刊をめざとく見つけて、さっそく読みはじめた。

 

鳩時計が7回鳴って間もなく…

「ただいま〜」と、夏妃が入って来た。

「おかえりなさ〜い!」栗生姉と麻琴は声を揃えてニッコリと微笑んだ。

ここは着いたそこからゆったりとした時間が流れて居心地よくて落ち着くから「ただいま~!」なんだよねと、麻琴が言いはじめてから、3人はこんな風に挨拶をするのが定番となっていた。

 

「きょうは、週末だからすっごく忙しかったの~遅くなってごめんね!お腹すいたでしょ?途中でタコ焼き買ってきたの」

「わぁい!宝来町の蛸焼こがねだ、これって高校生の時にいつも食べていた青春の味だよ!じゃあ、まずはタコ焼きからいただきましょ~!まだアツアツだよ~!栗生姉にいさん、猫舌だから気をつけてねっ!あ~ほんっふぉ、あふあふ...」 

「ほらほら、何言ってるかわかんないよ、麻琴ちゃん。タコ焼きは逃げないから、ゆっくり食べな」

「よかった~そんなに喜んでくれて、買ってきた甲斐あるよね~またなんか食べさせてあげたいって思っちゃうもん。康平さんも、こんなだったらいいんだけど...

夏妃が、少しためらいつつ、話しを続けた。

 

「康平さんってね、ほら、シャイで口ベタでしょ?だから、なんていうか、わたしが作った料理に限らず買ってきたものだとしてもね、リアクションがあんまりないっていうかね~。ちょっと寂しいときがあって...

「ある、ある!亮介さんも、そのタイプだよ~!でさ、おいしい?って聞いたら、おいしいよって言うんだよね!なんにも言わないのはおいしいからとかナントカ。でもさ~、やっぱリアクションって欲しいじゃん」

「だよね、だよねー!あー、なんか話したらスッキリしちゃった。栗生姉にいさんのとこに来たら、ついモヤモヤを吐き出したくなるのよね~」

 

「僕はただ聞いてるだけで、なんにもしてないんだけどね。ハッハッハ。ちなみに、僕はおいしいものはおいしい!ってちゃんと言うけどな。作ってくれた人や買ってきてくれた人に対してキチンと礼を尽くさないと」

と、栗生姉はキッパリと言いながらも照れて笑った。

「栗生姉にいさんって、そういうの大事にしてるよねー。あとさ、なんかさー、栗生姉にいさんって、そこにいるだけで和むってゆうか?話したくなる雰囲気があってさー、ほら、女の子が寝るときにぬいぐるみに話しかけたりする、あんな感じ?」

「なんだよそれー、僕はぬいぐるみかい?」

 

「あー、でも麻琴ちゃんの言いたいこと、なんかわかるかも~!女ってさ、ある程度自分の中で答えは決まってるんだけど、ただただ話を聞いてもらったり、背中を押してほしいってときあるんだよねー」

「そうそう、まさに、それ!わたしもさ、いっつもここで、栗生姉にいさんに話聞いてもらってさ、気づいたら癒されてスッキリして、悩んでいたこともなんだかうまく解決してきたんだよねー」

「栗生姉にいさんって、魔術師なのかなぁ?」

「そうだよ、そうだよ、ぜーったい魔術師だよ!!」

「ハッハッハ、僕が魔術師かい?それはなんだか嬉しいね」

 

「思えばさ、わたしが彼氏と別れて悶々としてた頃にさ、ふらっと文筆堂みつけたのがはじまりなんだけど。入った瞬間に、なんだろうこの懐かしくて安心する感じって。で、それからちょくちょく顔を出しては、その度になんだかんだと悩みやら愚痴やら聞いてもらって。じゃあこの本読んでみたら?なんてピーッタリなのを選んでくれたりさ。なんでそんなに、女心わかるの?ってビックリするよねー」

「懐かしいね、そんなこともあったなぁ。あの頃の麻琴ちゃんは崖っぷちだったよな、マジで」

「そっかぁ、麻琴ちゃんも遠距離だったものね」

「いやぁ、遠距離ってゆうか、もう別れちゃって音信不通みたいな状態が長すぎてさ、でも、簡単には忘れられないし、次に行くにも行けないしで、モヤモヤしまくってたよ~!どんだけ栗生姉にいさんに想いをぶつけたことか!アッハッハ」

 

「まぁ、よく乗り越えたよね、ホント。これでも、かなり心配してたんだよ、僕なりに」

「やっぱり栗生姉にいさんは、魔術師でもあり守護神みたいだよね、麻琴ちゃん!」

「そう!この店なら、あなたが探している“あの頃”がきっと見つかると声をかけてくれたんだよね」

「そんな臭いセリフ言ったかな…」

「覚えてないし~!でも守護神って、なんか似合うかも~。おかげで、無事に結婚まで漕ぎつけました~」

そう言いながら麻琴は、栗生姉の前に立ち、目をつぶってパンパンと柏手を打って笑った。

「コラコラ、僕は神社じゃないから」

そう言いながら栗生姉は嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、そろそろフルーツサンドといきますか?お互い、きょうは羽を伸ばしましょ~!!」

「あーっロクテンハチのフルーツサンドね、一度食べてみたかったの。なかなか五稜郭の方まで行かないからね、さて守護神さま~エスプレッソをお願いいたします」

夏妃が麻琴のマネをして柏手を打ちながら今にも吹き出しそうに笑っている。

「おやおや、夏妃ちゃんまで…それでは、エスプレッソを淹れるとしますか…ところで僕のフルーツサンドはどこかな?」

「大丈夫、残ったらあげるから、その前にBGMは夏妃ねぇさんの新作の朗読をよろしくでございまする~」

麻琴もふざけながら柏手を打って笑った。

 

おいしいものがあること、くつろげる空間があること、笑い合える仲間がいること、それは最高にしあわせな宝物だ。

ロマンとノスタルジーに満ち、それぞれに異なる風情を持つ坂道、美しい教会群と歴史的建造物がある函館を象徴する元町界隈。

どの坂道を歩いても、まるで絵画のような風景が広がる…

箱館クリオネ文筆堂は、今宵も誰かの心に灯りをともすように、元町の坂道の途中でひっそりと営業しています。

 

END


フルーツサンドのテイクアウト専門店「ロクテンハチ」

市電「五稜郭公園前」電停から徒歩約2分のフルーツサンドの専門店。

コク豊かで後味はあっさりとした道産生クリームを使い、特注の滑らかな舌触りの生食パンが、全国から取り寄せるフルーツの味を引き立て口の中で調和する。

毎朝スタッフが手作りしていて、たっぷりと入ったフルーツの断面が華やかで、花びらのようなミカン、色鮮やかなキウイやパインが真っ白な生クリームに映える。


・「寺子屋本舗 函館店」

赤レンガ倉庫内にある、おせんべい屋さん。

ぬれおかきは、注文するとおかきを網に乗せて焼いたあと甘醤油を塗って渡される。

ほのかに温かく 柔らかいおかきは、所々カリッと香ばしく 中はもっちりとした食感。


持ち帰りたこ焼き専門店「蛸焼 こがね」

市電「宝来町」電停近くで40年以上続く、たこ焼き専門店。
この場所で40年以上愛され続けるたこ焼きは、10個入り350円と、15個入り500円。
たこは、近海産を仕入れていて鮮度抜群。
キャベツ、さくらえび、白ごま、削り節、紅ショウガの入ったたこ焼きは、サラッとして酸味の効いたソースとよく合うフワフワした食感がたまらない。


前作、箱館ストーリー「文芸サロン・箱館クリオネ文筆堂」の奏ちゃんや冬果、尾崎先生や野本直美、青田さんなどが登場する少し前の物語!
美蘭さんのリクエストに瞬時に反応し、思いのままに書き上げた、ぴいなつちゃんのこれまでにない形の新しい箱館ストーリー。
どうぞ、お楽しみ下さい!