「恋愛には、季節があり、法則がある!」

そう、言ったのは別れた、彼だった。


奇跡の出会いも、偶然の出会いも、全てはミステリアス!

最初は、相手の名前も電話番号も知らない。

だって、そうだろう…

目の前に、やさしく微笑む素敵な女性がいたら、男は99%その彼女に恋をするだろう。

それが恋の季節でいう、《春》なんだ。


そして、男は彼女に何度も猛烈に自己アピールをしながら、ようやくデートの約束をつける!

この恋は、どんどんヒートアップして、想いは一気に駆け上がる。

それが恋の季節でいう、《夏》なんだ。


やがて、二人は落ち着き、しっとりとなる。

夏に巡ったドライブやアウトドアの思い出を胸に、デートは夜の時間へと変化する!

恋のA・B・Cも、ここで完結する。

それが恋の季節でいう、《秋》なんだ。


そうこうするうちに、二人の恋はうつむきかげんになり、時として別れが訪れる。

確実に、寒い季節がやってくるように、時間も恋も流れていく!

それが恋の季節でいう、《冬》なんだ。


このような『恋の季節』には、再び春が巡ってくることは、ないのでしょうか?

自然界では、草花が寒い冬に耐え、春になると再び花を咲かせるのに…。

恋愛には、必ず冬が来るかもしれないけど、私はそんな《冬》をしのび、そして《春》

待つ、という気持ちが大切だと思うのです。

「やれやれ、何と言うことだ、流れてきたのは彼女の好きな曲だった…」

彼女を忘れようと、入った松風町の路地裏にある小さなバー。

彼女を忘れようと、飲んでいるバーボン。

しかし彼女の顔が、より鮮明に思い出されてきた…。

僕は今まで、彼女に何をしてあげたのだろう?

誕生日にプレゼントを贈り、たまに金森倉庫の雑貨屋で見つけた小物をあげる。

そんな事ぐらいだった。

特に、仕事が忙しくもなく。

ただ、ずるずると…。

ただ、ダラダラと…。

なぜ、僕は彼女に「愛してる!」と言えなかったのだろう…。

違う、僕には愛を育む術がなかったのだ…。


あの人は、いつも毎晩11時に「おやすみ!」の電話をくれた。

それは1年前までの、事だった…。

別れるまで毎晩かかさず、きっかり夜の11時に電話が鳴った。

私はいつも、その11時前の5分間にときめき、時計の針を目で追っていた。

そして…

再び、夜の11時きっかりにスマホが鳴った。

「また、会えないかな?」

1年前と同じように、照れたような口調で、彼はモソモソとそう言った。


「ねぇ、覚えてる?あなたは、毎晩11時きっかりに電話を掛けてきたのよ」

「エッ、11時?そうだっけ」


そう言って照れながら頭を掻く仕草が、電話の向こうから伝わった。

それが、彼のいつもの癖だった。

私たちは、《冬》に出会って《春》に別れた。

そして、1年後の《春》に再び、再会した。

彼女と別れてから僕は、これという事もなく、時を過ごした。

僕は、別れてから、彼女とは1年間まったく会わなかったし連絡もしなかった。

いや、会わないようにしていたのかもしれない。

そして僕は、1年ぶりに彼女と再会した。

待ち合わせの元町のカフェに、彼女は30分遅れてやって来た。

1年前の彼女は、ほとんどノーメークで肩まで伸びた髪が印象的だった。

そして、1年ぶりに会った彼女は、キチンと化粧をして、髪はショートボブに変わっていた。

手を伸ばせば、すぐそこに彼女がいた。

20センチのところに…

「そうさ、20センチの勇気が、僕にはなかったのさ…」

チョコレートパフェが空になる間、彼女は1年前の話に笑い、そして涙ぐんだ…。

その間、僕は2杯のコーヒーを飲んだ。

「ねぇ、チョコレートパフェおかわりしない?好きだったろう…」

「でも甘いもの、今は嫌いになったの!だから、これが本当の最後…」

そう言うと彼女は、僕と同じコーヒーを頼んだ。

ほのかな香りが、まるで夢を見ているような気分にさせた。

コーヒーが嫌いな彼女が、飲んでいるコーヒー。

それは、僕と同じ『ハワイコナ』だった。

そして、僕らは再び恋に落ちた。


僕は、再会した彼女に恋をした…

彼女は、再会した僕に恋をした…

僕たちは今、ゆっくりとした年を重ねる恋愛をしている。

そこには何か見えざる摂理があるのだろう。

だから、出会いは奇跡なんだ。

僕らふたりは、恋と言う《季節》ではない、自然と言う《季節のメヌエット》を、巡っているのだ。



[END]



今回の物語、『季節という名のメヌエット』は、お楽しみいただけましたか?


主人公は、「彼」と「彼女」のWキャストです。

テーマは、流れる季節を恋愛に例えた、恋物語です。

「僕」は、奥手な性格で、少し優柔不断なところがある。

「彼女」は、「僕」からの告白をずっと待っている。

そんな2人の想いが空回り、交差しないまま別れてしまう。

少し優柔不断な「僕」と、そんな彼を待ち続けた「彼女」の物語です。


「僕」は、「彼女」との別れをずっと引きずり「彼女」を忘れようとするが、忘れられずにいる。

「彼女」は、「僕」から愛されていないと思うようになり、心は晴れないままでいる。


「僕」は、真面目で一途な性格、それゆえ誤解されやすいタイプだが、自らそれを克服して物事にあたるような、素敵な男性である。

とにかく几帳面で真面目な彼は、何事にも一生懸命な性格で、それを仕事に向けていたのです。

彼は仕事にはタフでも、恋にはちょっと奥手だったようです。


一方の「彼女」は、おっとりした性格に見えて、髪をバッサリ切るなど内面だけでなく、外見までも変えるような、優しさの中にも強い意志を持った美しい女性。

何かと嫉妬したり、ちょっぴり焼きもちをやくような、ピュアで可愛らしい面を持ちながら真っ直ぐに「彼」を見つめている素敵な女性なのです。


ずっと、すれちがっていた2人の想いが、ようやく交差したのでした。

そしてこの二人の恋は、やがて自然の春の訪れのように、《恋の第二章》が始まったのです。