「ここんとこ忙しくて、バタバタしていたけど、どれも美味しいな」

「夏が終わるとちょっぴり淋しいけど、秋っていいわね」


食べ物を頬張りながら、彼が笑って答える。

「やっぱり秋なんだなー。確実に季節は進んでいるよ」


久しぶりに、会話が進むも、食事が終わると…

「お疲れさまー!」と、そそくさと帰るのね。

「うん、またね」と、私は後ろ姿を見送る。

いつもは駅まで送ってくれるのに…


一人で駅に向かうとビルの合間に丸い月が見えた。

今日は、十五夜だ。

「だったら、眺めのいいホテルのBARで、お月見に誘ってくれても良かったのに、たぶん気づいてないわよね」

トゥルルー トゥルルー トゥルルー

「ダメ、出ない…」

トゥルルー トゥルルー トゥルルー

「何やっているのよ…」


「もう、ほんとバカなんだから…」

私は、短い自分の影に向かって文句を言った。