「イーハトーヴ」とは、宮沢賢治のふるさとを示し、岩手県の愛称のように使われている事が多いが、『注文の多い料理店』の序文にあるように、“著者の心象中に、この様な情景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である”と示され、本来は「ドリームランド」を意味するものであると思う。 

「イーハトーヴ」は、確かに岩手県からの発想だが、正確には岩手県を超えた地域も含まれており、『ポラーノの広場』には、「イーハトーヴ海岸」という地域が出てくる。

 

「主人公・レオーノキューストは、イーハトーヴ海岸の一番北のサーモの町から南に標本採集の出張を一ヶ月続け、最後は小さな汽船でシオーモの港に着き、そこから汽車でセンダードの市に行きました」とある。 

この「イーハトーヴ海岸」こそ、青森県から宮城県までの三陸海岸であり、「サーモ」は青森県八戸市の鮫、「シオーモ」は宮城県の塩釜であり、「センダード」は仙台市がモデルとなっている。 

これより先に書かれた『ポランの広場』では、南から北へと主人公が北上する様子が簡潔に書かれているが、この『ポラーノの広場』では、逆に北から南へと下り、その内容も詳細に書かれ変化していく。 

この『ポラーノの広場』は、賢治が妹トシたちと八戸の鮫を訪れ2泊した後に書かれている。