今回の函館ストーリーは…

彼と彼女の、お互いのストーリーが絡み合う物語です。

クリスマス・イブを一緒に過ごすはずだった2人ですが

残念ながら思い通りにはいかなかったようです。

交差する2人の想いを、どうぞお楽しみ下さい!



函館ストーリーChristmas For You!

今日はクリスマス・イブ。

私は、彼の部屋で彼の帰りを待っている…。

約束のお昼に彼の部屋を訪ねると、そこには1枚のメモがあった。

「急な仕事で、朝から出かける。なるべく早く帰る」

殴り書きの乱れた字が、慌てて部屋を飛び出していく彼の姿を想像させた。

とりあえず、私は部屋を掃除し簡単なクリスマスの飾り付けをして、用意した材料でケーキやディナーを作った。

「早く、帰ってきて…」

私は、行儀悪くソファーに寝転がりながら、そう呟いた。

 

今日はクリスマス・イブ。

僕は、部屋で待っている彼女の元へと急いだ。

急な仕事で夜遅くなった僕は部屋に帰ると、そこには白い恋人がいた。

それは、テーブルの上にあった2人の思い出の写真で、彼女の姿がキレイに切り取られ、その白い部分には「さよなら」の文字があった…

そして、僕へのクリスマスプレゼントが一緒に置かれていた。

「やれやれ…」

僕は、何度も彼女に電話をしたが、ずっと留守番電話だった。

ここ数ヶ月、仕事に振り回され彼女とのデートは、いつもドタキャン。

「今年のクリスマス・イブは2人で一緒に過ごそう!」

そう言って約束したのは、1ヶ月前のことだった…。

 

私は夜の7時まで、彼の部屋で帰りを待っていたわ。

「仕事が忙しいのはわかるけど、何もクリスマス・イブの日まで仕事をしなくてもいいじゃない…」

この日のために用意した、2人が好きな曲を集めた特製のクリスマスソングも、だんだん耳障りに聴こえてきた。

何度も、彼から電話がきたけど…

悲しくて電話に出なかったし、メールも見なかった。

「もぉ~知らない!」

そう言って、今は自分の部屋で、クッションを壁に投げつけた。

 

僕は、彼女に謝ることもできずに新年を迎えてしまった。

「ハァ~、お正月を過ぎるまでの延長になるとはネ…」

相変わらず、電話は留守番電話で、メールの返事も来なかった。

あの日から彼女とは一度も逢っていないし、声も聞いていなかった。

年末も、仕事に流される、要領が悪い僕がいけないのだが…

そして僕は、遅い正月休みを利用して駅へと向かった。

 

彼は、年末も忙しいらしく電話もメールも少なくなり、お正月も仕事だとメールでぼやいていた。

私は、もう少し待とうと思った…。

スグ仲直りしようと思ったけど、少しくらい彼を待たせてみようと思ったからだ。

「お正月も過ぎたし、そろそろ、許してあげようかな…」

朝から、青空がとっても眩しい。

「今日は、素敵な1日になりそう」

カーテンを開けたら、真っ青な空が目に飛び込んできて彼の笑顔が浮かんだ。

「よし!今夜、突然に彼の部屋を訪ねてみよう!」

そんな事を考えていたら、封筒が届いた。

Christmas For You!》というメモと一緒に1枚の写真と函館行きの航空券が入っている。

それは、クリスマス・イブの日に私が、彼の部屋で切り取った写真と同じ場所を撮影した写真だった。

私のスペースを空けて新しく撮った、彼が一人で写っている写真。

封筒の消印には、函館の文字が刻まれていた。

 

僕は、始発の新幹線で函館へ向かった。

いつも、函館へは列車で行くのが好きなのだ。

「彼女は、許してくれるかな?」

僕は、真っ先にベイエリアへ行き赤レンガ倉庫をバックに写真を撮った。

ここは、去年の夏に彼女と初めて訪れた函館での思い出の場所なのだ。

僕たちは、赤レンガ倉庫を背にして海を眺めながら、ソフトクリームを食べラッキーピエロのハンバーガーを食べた。

そして、写真を撮ったのだ。

その写真は、クリスマス・イブに彼女が切り取った写真…。

僕は、同じ場所で同じポーズで一人だけで写真を撮り、飛行機のチケットと一緒に封筒に入れて彼女の元へと送った。

 

「私たちのクリスマスはまだ終わっていない…」

私は、函館から送られてきた写真を眺めながら、そう呟いた。

とりあえず、クリスマス・イブに切り取った自分の写真を空いているスペースに貼ってみた。

写真の私は、夏の装い。

彼は私が部屋に置いてきたクリスマスプレゼントのセーターを着ていた。

私は、急いで冬物の服を選んだ。

そして…

「一人で、函館に行くなんてズルイじゃない!」

私は、久しぶりに彼に電話をした。

BGMとシンクロして少し涙声になったけど…。

午後の飛行機で、函館に行くことになっていた。

私は、同じ場所で新しく写真を撮る約束をした。

「そう、この場所から始まったの、私たちの恋は…」

そう言って、私は送られてきた写真にキスをして、家を出た。

[END]

原作:クリオネ「白い恋人」 監修:ぴいなつ

 

「ウィンターマジック」KARA

今回の物語Christmas For You!は、いかがだったでしょうか?

今回は、彼と彼女のお互いのストーリーが絡み合う物語。

KARAの「ウィンターマジック」が好きで、この歌から物語のヒントを得ました。

主人公は彼女で、強くて負けず嫌いな男っぽい面と、さびしがりやで甘えん坊な女っぽい面という、2つの面を持ち合わせたような女性です。

でも、どこか少女性がまだ残っていて、そこがまたとても可愛いのです。

普段の彼女は、自分の少女性を制圧しているのではないでしょうか?

そして、彼の前では自分を解放している!

そんなところが、とても魅力的な女性なのです。