何とも言えない、哀しい物語である。

救いようのない陰鬱な雰囲気、閉塞感、理想と現実の落差…

合間に挿入される不思議な事象や、不可思議なセットの感じは、あまりにもシュールだ。

視聴者に、投げつけられる様に配置された言葉の数々。

JA・シーザーの音楽や短歌が効果的にシンクロし、そこに溢れる寺山修司的な演出が素晴らしく、毒々しい色の使い方がさらに効果を増している。

 

映画は順調に滑り出していき、美術効果と共にその映像美に視聴者は魅了される。

物語が進むに従い、徐々にパラレルワールドに引き込まれていく。

そして、全てが「それは嘘だった」と、転機を迎える。

ここから、現在の自分と過去の自分を対話させるというパラレルワールドを行い、途中までの自分の過去の偽りを自分自身で暴く! 

この映画は、寺山修司の最高傑作といえるだろう。

何かしらの表現活動をされている方には、必見な映画である。