岩手県遠野では… 

「昼むかしは、ネズミが小便をかける」 

「夏むかしは、ネズミが笑う」 

と、言う。 

昔は、お話を聞くのは夜であり、冬だったからである。 

静かで長い、遠野の冬には、人々は家の中に寄り合い、言葉を交わすことを楽しみにしてきた。 

「この石はな、むがし弁慶が積んだという石で…」 

などと、お爺ちゃんが話をしたり。 

「むがしむがし、水神様から授かったタニシの子が…」 

などと、お婆ちゃんが話をしてくれたり。 


これら伝説や昔話などは長い間、口から口で語り継がれてきた、物語。 

 「語り」とは、聞く者のを育てるという。 

「話し言葉」は、聞く者に“想像力”を育む。 

「豊かな心と想像力」、それはまさに忘れられた日本人の心ではないだろうか? 

遠野は、今でも『遠野物語』の世界が息づいている。