札幌市時計台の前で、僕は些細なことから彼女とケンカをしてしまった。

さっぽろテレビ塔も、市民ホール横の花時計も、昼に見た中島公園も

まるで、幻のように、思えてならない。


夕方だったので、僕らはそのままホテルに入りチェックイン。


僕は、部屋に荷物を入れると、無言でバーへと向かった。

バーボンを飲みながら、だんだんと輝きを増す夜景をぼんやりと眺めた。


やがて、彼女が静かに僕の隣に座り、ソルティ・ドッグをオーダーした。

グラスがくると、長い沈黙を打ち破るように彼女が口を開いた…


「ねぇ、気が合うって、どういうことだと思う?」

僕は、何も答えずバーボンをおかわりした。

「息が合うということだと思うの」

彼女は、話を続けた…

「うまく合わないなら相手と同じように呼吸をすればいいのよ」


僕は、無言で届いたグラスを彼女のグラスと合わせた。

「カチン!」という心地よい音を合図に、彼女が微笑んだ。

それに答えるように、僕は彼女にウインクをした。