箱館ストーリー「幸せの砂浜」


午後の日差し 伸びる影が重なる

私は 手を伸ばしそっと手を繋ぎ 彼の顔を見る 

「何を照れているのですか?

そう言うと 彼は微笑みながら

「いやぁ~何でもないよ」

と つぶやく

クスクスと私たちは笑いながら 2人で見つめ合えば時が止まる

大森海岸に吹く風が 私たちをそっと包み込む


溢れ出した この気持ち 

元町公園で伝えた あの夜

私は 喜びをずっと忘れない

 

水平線が広がる 幸せの砂浜に

2人の足跡が続いてる

大事なのはきっと 胸の奥でそっと 感じるこのぬくもり


思わず 1人で駆け出してみた

振り返れば 子供みたいな笑顔で 私を優しく包んでくれる

「尾崎先生 いつまでもずっと大好きです!」

そう言って 私は駆け戻り胸に飛び込む

 

髪をなびく 少し強い潮風

私を見つめる視線は 相変わらず優しい

「どこを見ているのですか?

尾崎先生は 困り顔で視線をそらす

ふふっ 楽しい

じゃれ合う時間が 波の音に合わせて流れて行く

 

あの時 私の涙を受け止めて 抱きしめてくれた

今でもずっと覚えている 手のぬくもり

 

波打ち際に描く 消える事のない恋

見上げた夜空に 流れる星

私の心の中 もっと掴んでほしいギュッと


短い時の中に 詰め込まれた思い出

瞳を閉じれば輝きだす

これからもずっと続いていく 私たちの時間

2人が出会って これまでのアルバムをめくれば

一つ一つ 大切な思い出が溢れ出す

 

打ち寄せるこの想いは 穏やかな波の音のよう

まるで ささやき奏でる 恋のメロディみたい

2人の距離をもっと 近づきたいそっと こうして側に居られる幸せ

飛び込む腕の中で いつも私は 素直になれる

そして私を いつでも優しく包んでくれる

「尾崎先生 これからもずっと大好きです」


続いていく 私たちのラブ・ストーリー

二人だけの ラブ・ストーリー


「直美ちゃん そろそろ行こうか? みんなが待っている」

「ハイ! 尾崎先生」


私と尾崎先生は 大森海岸にある石川啄木の坐像に祈る

「栗生姉にいさん 康平にいさん 亮介にいさん 夏妃ねぇさん 麻琴ねぇさん 奏ちゃん 冬果ちゃん 亜弓ちゃん 卓也くん みのりちゃん そして梨湖ちゃん 柊二にいさん いろいろとご心配掛けてごめんなさい 私はもう大丈夫です! 今から会いに行きます」

「さぁ 直美ちゃん行こう! みんな首を長くして待っているそうだよ」

スマホを手に尾崎先生が 私に微笑む


私たちは バスに乗り函館駅前まで そして市電に乗り十字街電停で降り 夏妃ねぇさんが好きな大三坂を登っていく その先のクリオネ文筆堂を目指して…


END

この物語は…
箱館ストーリー「文芸サロン・箱館クリオネ文筆堂物語」~I am thinking of you at all times!~完結編の続編となります!
尾崎先生がみんなに約束したように、野本直美の体調が良くなり、これから2人で文筆堂へと向かうのですが…
その前に、野本直美の希望で大森海岸にある啄木小公園を、尾崎先生と2人で訪れているという場面です。