私の記憶が確かならば…

11月は、美蘭さんのお誕生日なはず?

それも11/16日と記憶しているが、もし間違っていたら申し訳ないので(^_^;)

早めに、お祝いをしましょう!

「Happy Birthday Eve!」

誕生日のお祝いって、遅くなるよりは先にやるのは良いと思うのです(^^ゞ

今回は、箱館ストーリーのコラボ作品で、美蘭さん(夏妃ねぇさん)の物語をお楽しみ下さい!

函館ストーリー「クリオネ文筆堂物語」

Forever with you

 

私の好きな大三坂は、石畳の美しさと異国情緒あふれる建物群によるエキゾチックな雰囲気が魅力で日本の道100選にも認定されている。

知り合いに、「函館の一番いい季節はいつ?」なんて聞かれるけど…

「函館は、どの季節も美しく鮮やかだから」と、ひとまず答える。

「でも、私がおすすめするなら秋の大三坂が魅力的だよ!」と、すぐに付け加える。

街路樹のナナカマドが通りを赤く彩り幻想的な雰囲気を演出していて、ひと目見た瞬間に、函館を表す代名詞であるエキゾチックという言葉を理解できるから。

 

「今年の冬は、何かが違う!」

そんな予感がする。

季節のはじめを知らせる風が函館山から大三坂を下りていくのを感じ、私は冬の足跡を聞いた。

もうすぐ函館は、どこまでも静かな白い世界へと変わる。

そんな事を考えながら大三坂を見上げていると、市電が私の想い出を横切り通り過ぎた。

 

「夏妃、今日は遅くなるのかい?」

「えぇ康平さん!仕事が立て込んでいて…」

「無理もない!師走ではないけど、最近はどこもかしこもバタバタしているようだ。函館はゆったりとした時間が流れる街なんだけどな、それを楽しみにしてやって来る観光客もいるだろうに、いつからこんな時代になったのだろう?」

「康平さん、難しいことは分からないけど。ここ数日、いやもっとかな?麻琴ちゃんも忙しそうで、お互いに話も出来ないまま文筆堂にも顔を出せないでいるわ」

「でも今日は、文筆堂に行くんだろ?」

「えぇ、今日は新メニューの試食会があってみんなが集まるんですって!康平さんも来るんでしょ?」

「僕は、打ち合わせで出掛けるから、みんなにヨロシクと言っておいてくれ」

「分かったわ」

 

それが、今朝の夏妃と康平のやりとりだった。

数年前、読み終えた本を閉じるように、あっけなく夏妃と康平の愛は終わった。

夏妃は、何度も函館駅のホームから康平を探していた。

康平は、誰も居ないホームで夏妃の影を追い求めた。

しかし、3年前に夏妃が函館を訪れ、止まっていた想い出の時間が再び動き出した。

「麻琴ちゃん、あれから私はずっとローファーにコインを入れて大三坂を登っているのよ」

《ローファーにコインを入れて好きな坂道を歩き、そのコインで電話をかけるとハッピーな事が起こる!》

これは、麻琴が教えてくれた愛のおまじないだった。

夏妃は、3年前にこのおまじないを実行し、再び康平と会い結婚して、今は函館で暮らしている。

「ヨシ!」

そう自分に言い聞かせて、夏妃はリズミカルな足取りで微笑みを絶やさぬまま、大三坂を上り始めた。

 

一方、チャチャ登りの坂の上では、朝から賑やかというより慌ただしかった。

聖ヨハネ教会を見下ろす和洋折衷の建物、それが文芸サロン・クリオネ文筆堂である。

オーナーである栗生姉(クリオネ)と、その仲間たちが朝から大騒ぎで準備をしていた。

「おい、ヤバいぞ!夏妃ちゃんが来てしまう。麻琴ちゃん、途中で夏妃ちゃんと会ったら買い忘れがあるとかなんとか誤魔化して時間を作ってくれ」

「分かった!上手くやるから、私のデザートは大盛りね」

麻琴はそう言うと、文筆堂を出てチャチャ登りを下って行った。

「そっちはどうだい?」

栗生姉奏太朗に声をかける…

文筆堂の若き仲間たち、大学生の奏太朗と恋人である高校生の冬果、高校生カップルの青田亜弓と桐山卓也は文筆堂の掃除やテーブルのセッティングや飾りつけなどをしている。

「栗生姉にいさん、もうすぐ終わります!」

奏太朗が一通り確認をして、そう答えた。

 

キッチンでは、文筆堂の新しい仲間となった梨湖と柊二が料理を作っていて、その傍らで野本直美と高校生の松原みのりが盛り付けや、デザートの準備をしていた。

やがて、「ただいま!」という声と共に2人の男性がやって来た。

尾崎と夏妃の夫の康平である。

2人は、それぞれ花束やプレゼントのケースを手に持っていた。

「よし、そろそろ準備も出来たな?直美ちゃん、麻琴ちゃんにOK!だと連絡してくれ」

栗生姉声高々にそう言うと、全員が拍手をしてお互いの労をねぎらった。

「栗生姉さん、尾崎先生、みんな!夏妃のためにどうもありがとう」

康平がそう言うと深々と頭を下げた。

そのとき、「間に合った~!」と麻琴の夫である亮介が走り込んできた。

仕事で、亮介だけが文筆堂へ来ておらず、ちょうど今やって来たのだ。

「みんな、すまない!」

亮介は吹き出す汗を拭おうともせず、頭を下げた。

「亮介にいさん、遅れたバツとして飲み物の追加をお願いします!」

冬果が麻琴の仕草をマネてそう言うので、大きな笑いが起こった。

「もちろんだよ冬果ちゃん!麻琴と冬果ちゃんの分は、別に用意してあるよ」

 

和やかなムードの中、野本直美のスマホが鳴った。

麻琴からLINEで、「もうすぐ、着く!」とあった。

野本直美がそのことを伝えると、栗生姉が動いた。

「さぁ~みんな、打ち合わせ通りで頼むよ!」

そう言うと栗生姉がパンパンと手を叩いた。

それを合図に、栗生姉を残してみんながそれぞれ身を隠す。

やがて、麻琴のはしゃぐ声が聞こえてきた。

 

「ただいま~!」

麻琴と夏妃は声を合わせて、そう言うと扉を開けた。

「おかえり!夏妃ちゃん、麻琴ちゃん」

笑顔で栗生姉が出迎える中、シーンと静まり返った文筆堂には美味しい空気が揺れている。

「栗生姉にいさん、みんなはまだ来ていないの?」

夏妃が栗生姉と麻琴の顔を交互に見渡す。

そこへ…

「夏妃ねぇさん、お誕生日おめでとう!」

冬果と青田亜弓が声を合わせてそう言うと、パンパンというクラッカーの音が鳴り響いた。

麻琴が夏妃の背中を押し中央に立たせると、隠れていた仲間たちがそれぞれに「おめでとう!」と言いながら、夏妃を中心にして輪を作った。

ビックリする夏妃の元へ、康平がプレゼントを野本直美が花束を持って輪の中へと入って行った。

「夏妃ねぇさん、お誕生日おめでとう!」

野本直美から花束を受け取ると、夏妃は思わず涙ぐんでしまう。

「夏妃、誕生日おめでとう!これからも2人で歳を重ねていこう」

康平の言葉に「うわぁ~!」と歓声が上がる。

 

夏妃は「ありがとう!」と、一人一人にお礼を言うと、涙で目を真っ赤にしながら…

「麻琴ちゃん!よくも騙したわね。栗生姉にいさんも。康平さんにもまんまとやられたわ」

そう言うと、ローファーからコインを取り出し麻琴の愛のおまじないで、康平と再び出会い、文筆堂のみんなと出会うことが出来たのだと、伝えた。

そして、主役である夏妃そっちのけで、麻琴と冬果が食べ過ぎて伏せってしまい、奏太朗と桐山卓也はガラナの飲み過ぎでウーウー唸っていた。

康平は栗生姉や尾崎や亮介にお礼を言い、夏妃は野本直美と梨湖に感謝の言葉を告げ、

柊二と松原みのりと青田亜弓はせっせと片付けをしていた。

 

やがて楽しかった時間もお開きとなる…

栗生姉がみんなを代表して、夏妃にお祝いの言葉を告げた。

「夏妃ちゃん、誕生日おめでとう!最近はみんな忙しくてね。ホントは誕生日の当日にお祝いをするのが良いのだが、今日しか全員が揃うことが出来なかった。でもね、誕生日の当日に夏妃ちゃんに文筆堂に来てくれなんて言ったら、夏妃ちゃんは遠慮するだろう?だから、文筆堂の新メニューの試食会にしたのさ、これは麻琴ちゃんのアイデアだけどな。もちろん新しい元町ケレーも直美ちゃんと梨湖ちゃんが今いろいろと考えてくれている。今日は、朝からみんなが働いてくれたよ!ありがたいことだね、これが文筆堂の仲間たちであり、夏妃ちゃんがみんなをまとめてくれているおかげだよ。みんなからの夏妃ちゃんへの感謝の気持ちを受け取って欲しい」

 

それに答えるように夏妃が立ち上がると、一緒に康平も席を立った。

「皆さんにとって函館の一番いい季節はいつですか?私は、秋の大三坂が好きです!春夏秋冬の函館はどれも美しく素敵な場所があります。どうか、自分の好きな季節と好きな場所を見つけてください。一瞬もとどまることなく、刻々と移ろう函館の彩り。そんな光の色を確かめて、これからも共に手を取り函館を愛していきましょう。私たちは同じ志を持つ仲間なんです。今日はこんな素敵なお祝いをしてくれてありがとう」

夏妃がみんなへの感謝を告げ康平と共に深々と一礼した。

その時、まるで夏妃を祝福するように、元町の教会の鐘の音が鳴り響いた。

まだ夕刻の時間帯であるが、辺りは闇のベールに包まれていて、ときよりキラキラと光り輝く色彩が函館の夜を演出していた。

 

END


今回の箱館ストーリーは、いかがだったでしょうか?

美蘭さんのお誕生日をお祝いする物語を!

と考えていたら、こんなストーリーとなりました。

夏妃は美蘭さんの分身であり、妹役の麻琴はぴいなつちゃんの分身です。

となれば、函館を舞台にしながらも、物語は文筆堂での出来事となるでしょう。

夏妃(美蘭さん)が主役となる今回の物語は、おなじみの仲間たちも登場します。

しかし、あくまで主役は夏妃(美蘭さん)なので、他のメンバーのセリフは極力

少なくしました。

いつもなら、妹のぴいなつが監修をしますが、多忙のため連絡もままならない

状況のため、私クリオネが一人で仕上げました。


「美蘭さん、お誕生日おめでとう!」(∩´∀`)∩ワーイ