ススキノのバーで、僕は一人でジャックダニエルを飲んでいた。

2杯目を頼んだときに、背中から声を掛けられた。


声の主は女性で、ずっとこのバーで男を待っているのだという。

男は、ジャックダニエルが好きで、僕の背中が彼によく似ていると言った。


「彼は、いつもジャックダニエルで、私は、いつもソルティドックだったわ」

僕は、黙って彼女の顔を見ていた。

「もう、来ないわね…」

そう言うと、彼女は黙り込んだ。


彼女は長い沈黙の中で、彼との思い出をいつくしむように…

そおっと、指でソルティドックをかき回した。