ガラス張りの店内から赤や青の傘が向こうに見えた

コーヒーカップを口から離すと 微かに潮の香りと雨の匂いがした

二人で向き合っているテーブル

サヨナラの予感


何もかもが変わっていた

あんなに楽しかった会話が

今は魔法がとけたように虚しく響く


変わることは悪いことじゃない

変わることはいいことだと思う


赤い傘が七財橋の影に消えていく

いつの間にか霧雨はシトシトと降り注いでいた

ベイエリアの石畳は雨に濡れ光を反射している


二人とも無言のまま店を出た

別れ際にあなたが言ったこと

雨の音にかき消され聞き逃してしまった


くやしい

最後までふりまわされていたことが

やっぱり くやしい


私は 愛に似ていることを

愛だと思っていた