雨へと変わる午後 私はひとり部屋の中にいた。

コーヒーカップを手に窓から外を見ると 石畳の坂が見える。


部屋の片隅に ティントーイやアンティークな小物を飾ってみた。

レトロな電気スタンドが放つ淡い光の中に浮かぶ セピア色の空間。

ミニカーやミニチュア模型を配して、行ってみたい土地を演出してみる。


コロナ禍の中 私は思い出を追いかけていた。

この街を出て 遠くに行く夢を捨てた。


だって… 

遠くまで行く必要が 無くなったんだもん。

「いつでも遠くに 行ける!」

ただ そんな気がしていただけ きっとそうなのだ。


思い出は いつもセピア色の世界からやってくる。

元町の教会の鐘の音が鳴り響く。

部屋の片隅にあるこのコーナーは

欠かすことの出来ない私だけのオアシスとなった。