僕は 自分自身と向き合いたくて この街にやって来た。

函館は一面の雪景色…

 

降り積もる雪が 悲しみや胸の痛みを静かに消してくれる。

「大丈夫 急ぐ旅ではないのだし…」

僕は 雪景色の函館山に向かい そう呟いた。

 

雪が激しさを増し 早めのチェックイン。

電話線が凍らない内に ホテルの部屋から彼女に電話。

僕は 彼女に好きな詩を朗読してくれるように頼んだ。

 

しんしんと降る雪 鳴り響く教会の鐘の音。

雪と風と空気の静寂の中で…

彼女の美声は 淡い初雪のように温かく甘い感じがした。