函館ストーリー「彼女からの7通の手紙」
一週間の出張で、会社が契約しているアパートに、入ったのだ。
僕にとって、初めての北海道が函館となった。
それも、旅行ではなく仕事で。
「今、着いたよ…」
彼女にLINEしようとして、つい手が止まった。
「やれやれ…」
彼女から、LINEや電話での連絡を一切、禁止されていたのだった。
「北海道に出張だなんて、寂しいわ」
「たったの一週間だよ、すぐ帰ってくるし、毎日LINEや電話をするよ」
見送りに来た、彼女との会話だった。
「はい、これ一週間分の手紙よ!毎日、1通ずつ読んでね。そして、あなたの好きなバーボンよ」
「手紙?ありがとう!」
「ねぇ~約束して!今日から一週間、お互いにLINEや電話をするのを禁止にしたいの。だから毎日、1通ずつ手紙を読んでほしいの。お願い、約束して」
彼女は、僕の目を真っ直ぐに見て、そう言ったのだった…。
出張の一日目、僕は1通目の手紙を開いた。
お疲れさま。
もう、函館に着いた?
初めての函館は、どんな感じですか?
私、あなたが函館に出張だと聞いて、函館のガイドブックを買っていろいろ勉強したの。
初めて見る函館は、とても不思議な感じの街ね。
私も、行った事はないけど、とても懐かしい感じがした。
いつか来たような街…
子供の頃に憧れた、ヨーロッパの小さな田舎街に似ている。
石畳の坂道があって、古い歴史的な建築物が並んでいて、とても素敵。
夜は、ベイエリアとかで美味しいお魚料理とか食べるのかしら?
さぁ~今日から、函館でのお仕事の始まり。
函館は、秋も深いんでしょ?風邪など引かないように注意してね。
おやすみなさい。
僕は、毎晩バーボンを飲みながら、彼女からの手紙を1通ずつ読んだ。
そして、1枚ずつ彼女に函館の絵葉書を書き送った。
手紙、読んだよ!ありがとう。
初日は、ちゃんと見る時間なかったけど、それでも函館という街の空気を感じる事が出来たよ。
夜は、ベイエリアの洒落たレストランではなく、地元の人に教えてもらった食堂で、ご飯を食べた。
鮭のハラス定食、こんがり焼いた脂たっぷりの鮭ハラスをおろし醤油で食べるの、スゴイ贅沢な味で、プリプリのイカの刺身も、美味しかったよ。
いつか、いろはを案内してあげたい。
こんな感じで、僕の函館での毎日が始まったのだった。
僕は、バーボンを1本あけ、彼女からの7通目の手紙を読んだ。
やっと、長い出張が終わりますね。
お仕事は、いかがでしたか?
函館の街には、もう慣れたかな?
あなたが、石畳の坂道を上ったり下りたりする光景が、目に浮かびます。
私、今とても嬉しいの。
やっと、やっと、やっと…
あなたに会えるのだもの。
ねぇ~いつか、私を函館に連れて行って!
約束よ。
函館の街を、案内して。
明日は、お休みでしょう?
だから、明日は函館の写真を撮ってきてほしいの。
それが、私へのお土産。
ガイドブックによると、朝の10時ごろに八幡坂の上から港を見ると、太陽が海に反射して、そのきらめきがとても美しいんだって!
八幡坂って、あの有名な坂道でしょう?
だから、明日の朝10時に、八幡坂で写真を撮ってね。
お願い、約束よ!
そして、僕は7枚目の絵葉書を書いて寝た。
そこには、短い文章で、「明日10時に八幡坂で写真を撮るよ!」とだけ、書いた。
翌朝、僕は彼女に言われた通り、真っ直ぐに八幡坂へと向った。
「なるほど~」
多くのドラマやCMの舞台となる、この有名な坂道は海へ向って真っ直ぐに伸びていた。
白い波頭が、陽の光をキラキラと反射している。
多くの観光客に、混じり僕はカメラを構えた。
「カシャ!」
心地よい、シャッター音が鳴り響いた。
その時…
満面の笑顔で、坂道を上ってくる彼女の姿があった。
やがて、坂道を上りきった彼女は、僕の胸におもいっきり飛び込んだ。
「どっ、どうしたの?」
声が、うわずってよく喋れない。
「だって、会いたいじゃない!この為に、電話もLINEもガマンしたんだから…」
僕たちは手をつなぎ、確かめるような足取りで、ゆっくりと石畳の坂道を下った。
「ねぇ~お腹が空いちゃった。だって、朝から何も食べてないんだもの」
「よし、この坂の下にある食堂へ行こう、とても美味しい…」
「鮭のハラス定食でしょう?私、イカ刺しも食べたい!」
僕のハートの中、BGMが静かに流れているような気がした。
そして、思ったんだ!
「彼女(いろは)となら、どこにいても離ればなれにならない!」ってね。
[END]
今回の物語、『彼女からの7通の手紙』は、お楽しみいただけましたか?
この物語の主人公は、「いろは」と言う名前の彼女です。
ちょっぴり寂しがりやで甘えん坊な彼女ですが、彼が一週間の函館への出張という事で、その寂しさを逆に最大限に生かします。
電話もLINEも禁止する事で、一週間後に会える効果を演出するのですが、それは彼女の純粋でひたむきな愛のなせる事だと思うのです。
そんな彼女に、彼も感心しひと目置くようになりますが、二人のハートは決して2つに割れる事はないでしょう。
監修は、ぴいなつ先生にお願いしました。
彼女の名前「いろは」は、可愛いけど古風な感じもして、直筆でお手紙を書きそうだからということでした。
原作は、まだLINEもない時代のもので、2人のやりとりはメールでした。
《メール?今なら、LINEでしょ。手紙か…どうだろ?》という、ぴいなつ先生の助言に対して僕が、彼女(いろは)が手紙を書くから良いのだとワガママを言いました。
《ラストの鮭のハラス定食は、もっと若い2人が食べそうな物にしたい!》と言ったところ、ぴいなつ先生から、《わたし、鮭のハラス定食が食べたい!あと、イカ刺しも》とリクエストがありました事を付け加えます(笑)
この物語の、まず設定がすごく好きで
返信削除1週間出張にいく彼に、7通の手紙を用意するだなんて、、、
かわいすぎませんか?
しかも、ちゃんとその約束を守り、
1日1通ずつ読む彼もすごいし、さらに返信のハガキを書いてくれるなど、神だよね^^
そして、最終日のサプラ〜イズ!!
きゃあきゃあ!だよねぇ^^
なんと素晴らしい展開♪♪♪
函館の坂道って、本当に絵になるねぇ
ドラマチック!!
そして、ちゃっかりハラス定食とイカ刺しをリクエスト!!
そうそう、女子は抜け目ないのですよ、クリオネ先生^^
わかってらっしゃる!!(笑)
LINEもない時代の原作を、現代版にアレンジされ、よりLINEをしない設定が際立ちますねぇ!
いまどきの人には、もどかしいことだろうね、即連絡がつく時代だからさ^^
あえてこんな演出をしたほうが
断然恋は盛り上がると思うなぁ^^
いやぁ、ほんと、ステキな物語を
ありがとう!クリオネ先生^^
いろはちゃんも、喜んでますね^^
ぴいなつちゃん
返信削除監修してもらいながら、原作は殆どそのままだったことをお知らせします(^^ゞ
僕自身も、この物語を気に入っていて、あまり手直しをしたくなかったのかもしれない。
今回、監修をお願いする前に読み直したら、2人のやりとりがメールだった事に改めて気がついた。
ぴいなつちゃんに、監修を頼まないでいたら、メールそのままにUPしていただろう。
やはり、ぴいなつちゃんの監修は大事ですね、いつもありがとう。
そんな訳で、ぴいなつちゃんに敬意を払い、今回のやりとりを公開しました(笑)
ここで、僕からの一言…
ぴいなつ先生の原作「2年先の未来予想図」を美蘭さんが朗読してくれましたが、海外からのアクセス数がとんでもなく、あまりにも悔しいのでぴいなつ先生に嫉妬して、今回のUPしました。
だから今回の函館ストーリーは、物語なんです!
でも、ぴいなつ先生と美蘭先生のコラボには、どうあがいても敵いませんけどね(^_^;)
こんばんは。
返信削除鮭のハラス定食、わたしも食べたいです‼️
ラストに再会できるっていいですね!
いろはちゃんは、まるで、
もしかしたら、
紫式部の生まれ変わり⁉️
なんて思ってしまいました。
素敵なストーリーを、ありがとうございます( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
美蘭さん
返信削除では、ぴいなつちゃんと美蘭さん、3人で鮭のハラス定食を食べましょう!
もちろん、イカ刺し付きですよ。
お会計は、僕に任せて(^^ゞ
ぴいなつちゃん、おかわり禁止だからな!
いろはちゃん、紫式部の生まれ変わりですか?
さすがは、美蘭さんだ!
目の付けどころが違いますね。
名付け親のぴいなつ先生は、そこまでイメージしてないと思いますが(笑)
美蘭さんの意見を採用しましょう(^O^)
いろはちゃん、紫式部の生まれ変わり!!
返信削除それはとってもステキですねー^^
では、続きはハラス定食とイカ刺しをつまみながら盛り上がりましょう♪♪♪
あ、わたしは大盛りでお願いしまーす
ワッハッハ^^