「ねぇ、逢いたいの。新しい靴をおろしたの、だから…」

「20分ぐらい遅れるよ、いいかな?」

「とっても素敵な靴なの、だから少しでも逢いたいの」

「なるべく早く、行くよ」


待ち合わせの場所に行くと、彼女はジッと自分の靴を眺めていた。

「やれやれ…」

どうやら、僕には気がつかないようだ。

声を掛けると泣きそうな顔で、僕を見つめた。


「ねぇ、見て!この靴よ。あなたの靴と同じ色なの」

「シンプルで、とてもいい」

「今日は、日がいいから八幡坂を歩いて来たわ」


「ハイ、これ!」

「えっ?バンドエイド…」

「これを買ってから来たのさ。靴擦れしているんだろう?」


僕たちは、ベイエリアのベンチに座りお互いの靴を脱いで並べた。

ブラウンのローファーが秋の陽射しを受け、切なそうに輝いていた。