札幌が舞台の、大人の洒落たストーリー!

どうぞ、お楽しみください。

 

彼女は、読んでいた本を閉じて、テーブルの上にある時計を見た。

時計の針は、週末の夜10時を少し回っている…。

「ヨシ!」

短く力強い言葉と共に、彼女は立ち上がった。

いつものことだが、このように一区切りというタイミングで、彼女は次の行動に移るクセがある。

夕方、本屋から帰ってきた彼女は、人気の長編小説の上巻を読み始め、ちょうど読み終わったところだった。

 

思い出したようにトイレに行き、夕飯を食べていなかった事に今、気がついたのだ。

分厚い上巻を読み終えて、これからストーリーはどう変化していくのか?

気になるところだが、続きを読むには少し頭を整理する必要がある。

 

彼女は、手早く髪を整え軽くメイクをすると、マンションの部屋を出た。

夜風に吹かれ、先ほど読んだ小説のストーリーを頭の中で繰り返していると、狸小路の近くまで歩いていた。

全国的にも有名な歓楽街であるススキノと北海道最古の商店街と言われる狸小路は、隣接するエリアである。

彼女は、ススキノより老舗や個性的な店が並ぶ狸小路の方が好きだ。

 

少し体が冷えたこともあり、目についたラーメン店に入ると、店内はカウンター席のみだった。

看板メニューの、塩ラーメンを注文した。

鶏ガラと豚骨を弱火で丁寧に煮込んだスープはあっさりしていて、中太の縮れ麺がスープとよく絡み、モンゴル産の岩塩が味わい深い優しさを生み出している。

《本当は、ビールも飲みたいけどね~女ひとりで夜の10時過ぎにラーメンとビールじゃ、さすがにヤバイだろうな》と、心の中で小さく呟いた。

《早めにラーメンを食べて部屋に戻ろう》などと、考えていたら声を掛けられた。

気が付くと店内は、ほぼ満席だった。

 

声の主は、彼女の隣の席を求め、短く挨拶をしてきた。

男は、彼女と同じ塩ラーメンを頼み、手にしたスポーツ紙に視線を落としている。

彼女がラーメンを食べ終わる頃、男もちょうど食べ終わろうとしていた。

ほとんど同時に箸を置くと、男が再び声を掛けてきた。

「ビールを頼むけど、一緒に飲みませんか?」

「じゃ~、一杯だけ」

男は、ビールを飲みながら彼女に話し掛けてきた。

 

やがて、2人は店を出ると、男が「もう少し一緒に飲まないか?」と聞いてきた。

ラーメンを奢ってもらった彼女は、断ることも出来ず、近くのバーへと着いて行った。

ほどよく酔った彼女は、自分から男を部屋に誘った。

何事もスローなテンポの彼女だが、男もせかせかせず、お互いが相通じる事を知ったからだ。

 

酔いもあったが、何より自分のペースに合わせてくれる男とベッドでくつろいだ。

男は、ハッキリとした大きな動作で彼女を楽しませてくれた。

筋肉質の大柄な体は、きれいにバランスがとれている。

彼女は、そのおおらかな彼の動きに敏感に反応し自分の体の動きを合わせ、心を中和し優美な時間を過ごした。

 

そして、2人は裸で抱き合ったまま、深い眠りについた。

 

END

  

今回の札幌ストーリーは、いかがだったでしょうか?

監修は、ぴいなつちゃんにお願いしました。

札幌と言えば、東京の歌舞伎町や福岡の中州と並ぶ歓楽街「すすきの」が有名ですが…

近くには明治6年に発祥したと言われる北海道最古の商店街と言われる「狸小路」があります。

舞台となった「狸小路」は、大通とススキノの中間にあたり、地下街にもつながっていて、夜の街としてイメージされる「すすきの」に対して、「狸小路」はお昼のランチなども賑わう札幌市民の憩いの場でもあると思います。

また、みそ味で有名な札幌ラーメンですが、塩や醤油の札幌ラーメンも絶品とのことです。

このように、今回は札幌の隠れたスポットともいうべき雰囲気の中で、週末に出会った男女のナイトストーリーとなりました。