本日よりnotoに「函館移住記」「函館ストーリー」を掲載しました。

ここでは「函館移住記」①を掲載します。

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【函館 移住記】

私が函館に住みたいと思った“本当の理由”

小学校の修学旅行で訪れた函館。
その街との再会が、私の人生を大きく変えることになりました。
今回は、私が函館を目指すようになった原点の物語です。


【移住記・第1回】

なぜ、私は函館を目指すのか

ずいぶん昔の話だが、今でも思い出すたびに胸が温かくなる。
あの日の出来事が、今の私を函館へと導いている。


■ 小学校の修学旅行で出会った街

私が初めて函館を訪れたのは、小学校の修学旅行だった。
津軽海峡を青函連絡船で渡り、トラピスチヌ修道院、大沼、函館山の夜景—— どれも鮮烈で、幼い心に深く刻まれた。

やがて青函トンネルが開通し、連絡船は姿を消した。
列車で3時間ほどで行けるようになった函館は、 当時、青森県では“一番近い外国”と呼ばれていた。

赤レンガ倉庫、八幡坂、元町の教会群。 駅から歩いて回れるその景観は
まるで映画のセットのようだった。


■ 二人で訪れた、あの冬の日

結婚前、奥さんの誕生日祝いに久しぶりに函館を訪れた。
修学旅行以来の再訪で、私たちは胸を躍らせていた。

ベイエリアから元町へ、ただ歩くだけで楽しい。
海風は冷たいはずなのに、不思議と寒さを感じない。

函館は、どこか異国の港町のような雰囲気があった。
今で言うなら、ディズニーシーのような世界観に近い。
どこか懐かしく、時間がゆっくりと流れている—— そんな街だった。


■ 朝市で出会った“お兄さん”

翌朝、朝市を歩いていると、ある店のお兄さんに声をかけられた。

「どっから来た?」
「青森です!」

青森県民は、知らない地名を言うより「青森です!」と言うほうが通じやすい。
そんな“田舎あるある”もあって、自然にそう答えた。

「そうか、仲間だな!」

海でつながる町同士。
その一言で、距離が一気に縮まった。

お兄さんは、 ウニ、イクラ、朝イカの刺身まで山盛りにして出してくれた。 ホテルで朝食を食べたばかりなのに、 あまりの美味しさに二人で完食してしまった。

お礼に何か買おうとすると、お兄さんは怒った。

「そんなつもりで声かけたんじゃねぇ。おらだぢは、まっとーな商売してる。仲間だと思ったから声をかけたんだ」

その言葉に、胸が熱くなった。


■ “本当の函館ラーメン”へ

「昼飯はどうする?」と聞かれ、 「ガイドブックに載っている人気店に行くつもりです」と答えると、 お兄さんはこう言った。

「あの店も美味いけど観光客向けだ。本当に美味い函館ラーメンを食わしてやる。14時に店の前に来い」

言われるままに行くと、 朝市の裏通りにある小さな店に連れて行かれた。

漁師さんや朝市の人たちがくつろぐ、地元の店。
そこで出てきたのは、 透き通ったスープに中太のちぢれ麺、 真ん中にトラピストバターが乗った塩ラーメン。

「これが函館の味だ」

その一杯は、今でも忘れられない。

会計をしようとすると、店の人は笑って言った。

「話は聞いた。そんなもん、いつでも食わしてやる。また函館に来い」

店内の人たちも口々に言った。

「また来いよ!」
「今度はおら達が別なもん食わしてやる!」

あの温かさは、今でも胸に残っている。


■ 再会を願って

数年後、結婚の報告をしに朝市へ行った。
しかし、お兄さんの店も、連れて行ってもらったラーメン屋も、 駅前の再開発で姿を消していた。

函館駅は新幹線乗り入れに向けて新しく生まれ変わり、 朝市周辺も大きく姿を変えていた。

それでも、どこかで会えると信じて、 私たちは東日本大震災の翌年まで毎年のように函館を訪れた。
多い年は3回も行った。

けれど、お兄さんには再会できなかった。


■ “恩返し”としての物語

東日本大震災では、函館朝市も津波の被害を受けた。
それでも函館の漁業関係者は、 私の住む町へ数十隻もの漁船を寄贈してくれた。

自分たちも被害を受けているのに、だ。

かつての十勝沖地震で、 私の町が函館に漁船を寄贈したことへの恩返しだったという。

海はつながっている。 人の心もつながっている。

このつながりを忘れないために、 私は後に“函館ストーリー”という物語を書くようになった。
あの日の出会いが、その原点だ。


■ だから私は、函館を目指す

あのお兄さんの笑顔、 ラーメン店の人たちの温かさ、 震災のときに寄せられた思いやり。

函館は、ただの観光地ではない。 私にとっては“第二のふるさと”だ。

だから私は、 いつかこの街に住むことを夢見てきた。

そして今、その夢を現実にしようとしている。